野良犬が闊歩する街、セルシュ
朝6時半には起き、7時にはバスターミナルへ行き「切符は?」と聞くと、係りの人は「まだわからない。」と返事をする。俺は、この「まだわからない。」と言う言葉が、あまりにも確信がない、どうでもいいような言葉に聞こえたので、一度、部屋に戻り、荷物をまとめ、出発できるように準備をした。
俺の予想じゃ、今日の石渠(セルシュ)行きのバス切符は、取れないという予想だ。
今日、石渠へ行けなければ、このまま徳格(デルゲ)へ行くと決めた。
デルゲ行きのバスは、午前8時なので、まだ時間は十分にある。切符は、あるか分からないが。
そして、30分後、再びバスターミナルへ行くが、イヤな予感が的中!
本日の石渠行きのバス切符は「没有」である。康定ですでに満席らしく、甘孜の人達の分は、ないらしい。
なんか、メチャクチャに腹が立ってきました。ほんなら、甘孜にいる人は、どっこも行かれへんやんけ!
俺の隣で、デルゲ行きの切符を買おうとしていた、中国人の兄ちゃんも「没有」と言われ、膝を崩して、うなだれていた。「クソッ!デルゲ行きもないのか。」ほんまに、どっこも行かれへんな。
どうせ、明日のバス切符も没有だろう。と、俺は、昨日と同じように、バスターミナル前にたむろしている、
トラックや普通車のオッチャンの所へ行った。
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セルシュへ行く途中の風景
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とりあえず、見た目がボロそうなので、値段が安そうな感じがした、トラックのオッサンに「石渠、多少銭!」と聞いてみた。オッサンは、俺が「セルシュ」と言ったことを確認して、一人のオッサンを呼んだ。
そのオッサンは、昨日、俺が値段を聞いたときに、800元とぬかしやがった、オッサンやんけ。
しかし、このオッサンは、なんと「石渠、200元」と言うではないですか。
「200元!」と俺が言い返すと、このオッサンは、後にいた中国人を二人連れてきて、3人で一人、200元だと言う。
どうやら、この二人の中国人も石渠へ行きたいが、バスの切符が取れなかったため、このチベタンのオッサンと値段交渉していたようだ。
乗車する人が増えると、一人あたりの金額が下がるので、俺にとっても、二人の中国人にとっても好都合な話だった。俺は、二人に「石渠へ行くの?」と確かめて、即決!
200元払って、今日、石渠へ行くことに決めた。
すぐさま、部屋へ戻り、チェック・アウトをして、リュックを背負って、チベタンのオッサンの車まで行き、甘孜を出発。お金は、600元のうち、200元を先に払い、この金でガソリンを入れた。
「サヨナラ、甘孜。楽しすぎたぜ。」と、バスよりも座り心地が良い、乗用車のイスに座り、甘孜の街を眺めた。次に行く、石渠という街は、どんな街なんでしょうか?
毎日、毎日、バス切符が取れない、石渠とは?ガイドブックによると、小さな街と書いてあるが、ここ1、2年で、大きな街に変わったのだろうか?
車が走っている間、中国人のオッサンが、タバコやお菓子をひっきりなしにくれるので、口を休ますヒマがない。車は、2時間ほどで、マニカンコへ着き、あっさりと通り過ぎた。
マニカンコ、数軒の家が、立ち並ぶだけの、とても小さな街?というか、村と言うか、ほんま何もない。
俺は、「行かなくて良かった」と思った。
車は、かなりのスピードで走り、凍てついた小川沿いの道を走っている。
それにしても、山がキレイだ。いくつかの村を通り過ぎた車は、大草原をひた走る。
なだらかな草原には、チベットでは、お馴染みの風景、ヤクや羊が放牧されている。
そして、甘孜を発ってから、約6時間後の午後2時、石渠に到着した。
さすが、バスの倍ほどの金額を払っただけあって、速いし、乗り心地も良かった。
ここまで来るのに、苦労したが、俺の期待を裏切り、石渠は小さな街です。
なんか力が抜けてきた。それくらい脱力感に襲われた。
ボケッとしているわけにもいかないので、オッサンに200元を払い、宿を探した。
一軒目に行った宿が、見た目が汚く、廊下も臭くて、そのくせ値段が80元もする、人を馬鹿にしたような宿だったが、どうせ1泊だけなので、どうでもよくなり、ここに泊まることにした。
昼ご飯を食べに、宿の人に教えてもらった、この宿の隣にある、酒楼(レストラン)に行った。
なんか、高級そうな感じがする所だったが、炒飯は肉入りで10元(140円)でとても美味しかった。
飯を食べながら、俺はガラス越しに、外を眺めていた。
なんて、野良犬が多い街だろう。
ゴミが溢れた、用水路に頭をつっこんだり、ゴミ箱をあさったりと、今、視界の中には6匹の野良犬がいる。
そして、この野良犬の全てが、凶暴で、体がデカイ、チベット犬だから、恐くてたまらない。
店員曰く、昼間は、人間には手を出したりしないが、夜になりと一変するらしい。
犬の会話から始まった、二人の女性店員との、会話&筆談は、いつしか自己紹介へと発展し、中国ではやっているらしい、QQという、チャットのようなモノの番号を教えてもらったり、メールアドレスを交換したりと、なんか楽しい。そして次は何処へ行くのか?と聞かれたので、明日はジェクンド(玉樹)へ行くと言い、
そして、ジェクンド行きのバス切符を今から、買いに行きたい。と言うと、
店員の一人が、電話で男友達を呼び、その男友達のバイクに乗せてもらい、切符売り場へと行き、無事に切符を買うことができた。
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部屋にて
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男友達と店員に、礼を言った後、石渠唯一と思われる、目の前の大通りをカメラをぶら下げ、歩いた。
石渠(セルシュ)は、海抜4,090mに位置する、小さな街だが、この大通りを貫くように、道が造られ、家や商店が建ち並び、街は拡大している途中です。
通りの向こうには、チベット住宅街があり、さらには、草原が広がっている。
そして、通りの両側の溝には、所狭しと野良犬が溢れていて、メチャクチャ恐いです。
人々は、チベット人がほとんどだと思うが、俺が今まで見てきた様子とは、少しだけ違います。
タウ、カンゼなどで、よく見かけた赤や黒のダシェーという髪飾りを巻いているひとは、おらず、毛皮の帽子をかぶっている人が多い。
それと、これは今まで見てきた中での共通のことだが、みんな民族衣装のチュパは、バチッと着ているのに、
足下は、ゴム長靴だったり、ビジネスシューズだったりと、非常に似合ってなくて、それがまた微笑ましい。
一通り街を歩き、部屋に戻るが、息がなかなか整わない。
標高4,090mのセルシュは、歩いているだけでも、すぐに息が切れる。
3,300mのカンゼでは、ここまでは、ならなかったのに、さすがに4,000mを越えると、キツイものがある。
夕食は、昼飯を食べたレストランへ行き、チンジャオロースとご飯を食べた。
さぁ、明日はジェクンド(玉樹)だ。
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