ポカラのトレッキング(ダンプスへ)

    早朝、6時10分。部屋から外を見るが、まだ暗い。
    出発の準備をして、懐中電灯を点けて、部屋を出た。
    トレッキングと言っても日帰りなので、荷物は、軽装である。

    1階に降りると、宿のオッサンに、こんな早い時間から、どこに行くのか?と声を掛けられた。
    「これから、バスでフェディまで行き、ダンプスへ行く。」と言うと、
    オッサンは、バスで行くよりも、タクシーの方が良いと言う。
    せっかく、こんな時間に出るのだから、フェディには、早く着いた方が絶対に良いと。

    確かにそうだと思う。
    こんな明け方に出発するのだから、フェディには、出来るだけ早くに着いた方が良いに決まってる。
    タクシーで行けば、その分、お金がかかるが、ここは、時間をお金で買うことにした。

    オッサンに、タクシーでフェディまで行くことを告げると、素早くタクシーを呼んでくれて、

    10分も待つこと無く、タクシーは、ゲストハウスに到着した。
    ここから、フェディまでは、1500Rs(約1500円)しゃーない行こう!

    タクシーは、ライトを点灯させて、まだ夜が明けきっていないポカラの街を走る。
    しばらく行くと、オレンジ色に色づきだした、マチャプチャレとアンナプルナの神々しい姿が現れた。

    サンライズには、間に合わないが、今日は、きっとキレイなヒマラヤが、見られると宿のオッサンは、言っていた。俺もそう願いたい。


    俺のそんな気持ちを察したのか、タクシードライバーの兄ちゃんは、猛スピードでフェディ目指して、走ってくれた。
    そして、今回のヒマラヤトレッキングの出発地点となるフェディに着いたのが、午前7時。
    タクシーの兄ちゃんに、サンキューと言って、俺はすぐに登山口へと向かった。

    さあ、行こうか!

    ダンプスへと続く登山路は、ゲストハウスの脇にある、石段の階段だった。
    早くダンプスに着きたいと思う心とは裏腹に、この階段は、かなりしんどかった。

    登り始めてから10分も経たないうちに、息が上がった。
    いつまで続くんだ、この階段は。
    すでに汗も出て来た。
    被っていた帽子は、とっくに脱いでいる。

    先の方まで、石段が見えると、気持ちが萎えてきます。
    まだ、あんなにも。。。

    急激に登っているため、振り返ると景色は良いが、それもどうでも良いくらい、しんどい。

    歩き始めて20分ほどで、ゲストハウスが2軒建ち並ぶ場所に出た。
    ダンプス下村の入口だ。

    ダンプスは、上下の集落に分かれており、俺が行くのは、もっと上の村だ。
    ゲストハウスを通り抜けて、ダンプス下村の畦道にさしかかった所で、「ワンッ!ワンッ!」と犬の鳴き声が聞こえた。
    行く手を阻むように、畦道に立ちふさがる強敵、犬。
    チベット犬ほどではないが、デカイ。


    犬は、俺に向かって睨むように吠え続ける。
    犬が嫌いな俺は、ビビってしまい、1っ歩も動けない。
    足を前へ踏み出せば、犬は、こっちへ向かってきそうな勢いだ。

    しかし、こんなところで時間をロスするわけには、いかない。
    俺は、早く進みたいのだ。
    立ちはだかる犬に対して、何か策はないものかと、考えた。

    俺は、足下に落ちている小石を手に取り、犬に目がけて、投げた。
    当たらなかったが、犬がひるんだ。

    これは効く!と手応えを掴んだ俺は、さっきよりも大きな石を投げた。もちろん当てる気満々だ。
    犬には、当たらなかったが、これが大きな攻撃となり、犬は背を向けた。

    犬が背を向けたと同時に、もう一回、石を投げる。
    石は、犬の近くに落ちた。
    これで、犬は、完全に戦意喪失となり、退散。

    こうして犬を退けた俺は、朝日を受け、オレンジ色に光る田畑を貫くような登山路を再び、歩き出した。

    村人とすれ違うたびに「ナマステ」と挨拶を交わす。
    これは、ナガルコットでトレッキングを始めてからの習慣になっていた。
    山でも街でも、人とすれ違ったり、目が合えば、挨拶をすることが、完全に染み付いていた。
    日本でも同じように出来れば良いのですが。。。


    登山路と言うよりは、石が敷かれた村の道を歩いていると、言った方が良いような道を歩くが、当然上り坂である。
    垣根の奥には、オレンジ色半分、白色半分に塗られた2階建ての民家が、数軒あり、トタン屋根の離れは、家畜小屋になっている。
    朝日を受けた家屋や木々が、優しい色をかぼし出している。

    村を通り過ぎると、また石の階段に出くわした。
    はあ、またか。

    何処までも続く、石段。
    すでに着ている服は、汗でビショビショです。
    出発の時に着ていたフリースは、とっくに脱いでいる。

    この登山路は、今まで海外で歩いて来た中でも、トップクラスです。

    暑い!暑い!
    しかし、立ち止まると、冷たい風で、汗がすぐに乾き、身体が冷える。
    やがて遥か遠くまで続くかと思われた石段が、姿を消し始めたその時、歩き出してから50分、ついに終わりが見えた。

    頂のように見えるそこへ、これで終わりだと思い、息を切らせながら、期待を前面に出し、登りきった。
    着いた!

    ここが、今回のトレッキングの第一の目的地、ダンプスだ。