古都の情景

    ローライ35Tを片手に持ち、写真を撮りながら、街をブラブラと、ほとんど当ても無く歩いています。

    ダッタトラヤ広場には、木彫り美術館があり、レンガ作りの建物の3階には、木彫りの装飾が美しい出窓から、

    白い人形が、顔を覗かせている。
    そういや、この顔、7年前にも見たよな。
    この顔は、カトマンドゥのダルバール広場にある、王様と王妃の彫刻と同じくらい、印象に残っていましたので、

    やっとバクタプルに来て、懐かしいと思えた。

    中へ入ろうか、迷いましたが、7年前に一度、見ていたので、今回は、入らず、その建物の左側にある、孔雀の窓を見に行った。
    狭い通りに面したお土産屋の兄ちゃんに、ガイドブックに載っている、孔雀の窓の写真を見せると、

    「ああ、これだよ。」って感じで、装飾が施された窓を指した。

    この孔雀の窓は、ネワール彫刻の最高傑作と呼ばれているもので、普段の装飾でも立体的な物が多いが、

    これは、更に上を行く、立体的さと繊細さを感じた。

    これは、キレイです。
    バクタプルのモナリザ的な感じなのでしょうか?
    デジカメで写真も撮りましたが、ここでは、出さないでおこう。


    そして孔雀の窓は、2つあることも、兄ちゃんは、教えてくれた。
    通りから入って、手前にあるのが、古い窓で、奥にあるのが、ガイドブックにも載っている、新しい孔雀の窓だということ。

    「ありがとう。」と兄ちゃんに言うと、サラッとお土産を進められたが、置物なんぞ、欲しくはないので、断り、俺は、再び歩き出した。

    来た道を戻るつもりで、歩いていたけども、結局は、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと、

    自分でも何処をどう歩いているかなんて、わかりません。

    そんな感じで歩いていても、宿の近くのトウマディー広場に着くのだから、きっと行動範囲は、狭いのだろうと思います。
    トウマディー広場には、ネパールの五重塔と呼んでも良いような、ニャタポラ寺院があります。
    高さは、30メートルあります。
    5重の土台の上に、5重の塔が、そびえ立っている。

    ちょっと上から目線で、バクタプルを眺めてみようと思い、俺は、土台の石段を上る。
    結構、急な階段で、雨の日なんか、滑りそうで怖いだろうと思いながら、

    戦士、ゾウ、獅子と左右に1対ずつ置かれている、石像を通り過ぎ、石段の上へ。

    石段の上では、暇そうなオッサンやカップルなんかが、おりますが、街を見下ろし、一人、感傷に浸る。
    「ええは、バクタプル。」
    旅に出ると、妙に自分にしっくりと感じる街が、あるのですが、今回のネパールの旅では、バクタプルが、しっくりと感じた街だった。

    何をする訳でもなく、ただ街を歩いているだけ、そこに身を置いている事が、すごく心地が良いのです。


    日本にいても、絶対に、感じられない感覚。
    別に、ここが、居場所だと思わないが、この心地良さは、どう説明して良いのか、わからない。
    何なんでしょうね?

    現実逃避か?回帰本能か?
    やっぱり、わからんが、居心地が良いのです。

    石段を降りている時に、ゾウの石像で遊んでいる少女がいたので、写真を撮った。
    その少女は、俺が石段を下りて、歩いていると、ずっと付いて来てます。

    そういう時なんかは、子供にお菓子でも買ってあげて、もうちょっと仲良くなって、写真を撮らせてもらおうかなと、

    考えていますので、そうすると、仲良くなれたので、また、カシャと写真を撮った。

    少女が去った後、ダルバール広場へ行ったり、王宮へ行ったりとしたが、あまり写真を撮る事も無く、一度、宿へと戻った。

    薄らと光が差し込む部屋には、洗濯物が、ロープに吊るされ、干されている。
    昨日、バクタプルに到着し、シャワーを浴びた時に、一緒に洗濯した衣服だが、いっこうに乾いてはいなかった。

    明日の朝には、ここを出るので、早く乾いてほしいところなんですが、完全に濡れたままだった。

    何か良い方法は、ないものか?
    と、考えた俺は、窓を開けて、外出することにした。
    部屋の窓を開けての外出は、躊躇われるのですが、これで、部屋に風が通る。
    早く乾いてくれ。


    ローライ35Tから、OM-2にカメラを持ち替え、部屋を出て、向かった先は、モモの食堂。
    肉は、きっと水牛(バフ)だと思うのですが、これは、これで美味しいので、好きです。
    値段は、50Rsでしたが、外国人だから、店のおばちゃんは、きっと、10Rsか20Rsくらい上乗せしているのでしょう。

    さて、ご飯も食べた事だし、また街をブラブラとします。

    再び、ダッタトラヤ広場の方へ行き、ブラブラと通りを歩く。

    通りのちょっとした広場と言うには、狭い場所には、素焼きのコップが、整然と並べられていたり、

    通りの所々にある、パティと呼ばれる、柱と屋根だけの小屋には、老人が腰を下ろし、雑談をしていたり、子供達の遊び場となっている。
    やせ細った犬も通りを徘徊しているが、人間に危害を加える事は、あまりないように思える。
    俺は、一度、追いかけられたが、犬が逃げる方が多い。
    肉屋の近くには、必ず犬がいて、おこぼれをもらったりもしていた。

    通りの脇にある、ヒンドゥー寺院では、火遊びをしていた子供達が、大人に怒られている光景をみた。
    やっぱ、悪い事は、ちゃんと怒ってあげないとね。

    ブラブラと歩いていると、ゲートを出てしまっていたので、再びゲートを潜った時に、係員にチケットを見せなければならない。

    ゲートの近くの揚げ物屋で、かき揚げのような丸い揚げ物を二つ買った。
    モモだけじゃ、足りないな。
    新聞紙の袋に入れられた、揚げ物を一つ取って、それを食べながら、またブラブラと歩き出した。