ヒマラヤトレッキング(ナガルコット〜)

    午前5時45分。
    まだ暗い。
    懐中電灯の明かりをたよりに、階段を下りる。
    宿の入口の前には、犬がウルサいくらいに吠えているので、なかなか宿の外へ、出られなかった。

    それにしても寒い。
    帽子を被り、ブランケットを羽織り、手袋まで填めているが、それでも寒い。
    目の前には、すでにバスが到着していて、エンジンをかけながら待機している。

    闇のような静けさの中、エンジン音だけが響き渡る。

    「まだ行かなくても大丈夫だ。コーヒーでも飲むか?」
    昨夜、夕食の時に、このバスのことを教えてくれた宿の兄ちゃんが、言う。
    ロウソクの炎をたよりに、プロパンガスのコンロに鍋を置いて、お湯を沸かし始める兄ちゃん。
    お言葉に甘え、俺はコーヒーをいただいた。
    体が暖まる。

    バスの運転手が、クラクションを鳴らし、俺に向かって、手招きしている。
    この運転手は、昨日、カトマンドゥから俺をここまで運んでくれた、運転手だったのです。
    助手の兄ちゃんも一緒だ。
    昨日は、Tシャツだけだったが、さすがに今日は、長袖のパーカーを着ている。

    「じゃあ、行くわ。」と言って、宿の兄ちゃんに、バイと手を振り、俺はバスへ向かった。
    車内も、寒いです。
    助手の兄ちゃんにチケット(100Rs)を渡し、前の方の席に座る。
    すでに欧米人旅行者が何人か、乗っていた。
    俺の後に、インド人観光客が、数名乗り込み、バスは、展望台へ向けて走り出した。


    展望台の駐車場に着いた時は、空は薄らと、紫色へと変わっていた。
    ここから、展望台まで、歩いて数分。
    展望台の中央には、鉄塔が建っているが、ハシゴが壊れていたので、登らなかったが、腕力で登っている人もいました。

    目の前には、ヒマラヤ山脈が、永々んと続いている。
    右側から、朝日が昇り、空が暗い青色から、鮮やかなオレンジ色へと、徐々に染まってゆく感じだ。
    灰色の山肌に真っ白の雪が、太陽の光を浴びて、燦然と輝いている。
    雄大というか、すごいです。
    これが見たくて、俺は、ネパールへ来たのだから。

    写真を撮りたいが、まだ暗いです。デジカメでもブレる。
    しかし、シャッターを押さずには、いられない。
    OM-2でも撮るが、全部、ブレていました。

    午前7時頃、大地にも光が届き、ヒマラヤの山々が雄叫びを上げるかのごとく、一気に輝きだした。
    ナガルコットの朝焼けのクライマックスでもあり、フィナーレだ。

    はあ、もう大満足。

    ナガルコット最大のイベント、ヒマラヤの朝焼けを堪能し、8時には、宿に戻って、
    ホテルのテラスで、トーストなどの朝食を摂りながら、ガイドブックを読んでいた。
    この次の予定は、ナガルコットから、チャング・ナラヤンまでのトレッキングだ。
    今回の旅で、一番楽しみにしていたのが、このヒマラヤの麓トレッキングなのです。

    7年前のネパールでは、ヒマラヤを見る。ということが、全く無かったので、今回は、是非やってみたいと思っていました。


    ガイドブックによると、結構、楽なルートだと書いてあるのですが、
    方向音痴の俺が、迷わずに、目的地へ、ちゃんと行けるか少々、不安です。
    しかし、天気が良くて、ほんま良かった。
    雨やった場合のことなんて、全く考えてなかったわ。

    部屋に戻り、バルコニーにあるイスに座り、コーヒーを飲みながら、ヒマラヤを眺めていた。
    9時には、ここを出ようか。
    出した荷物もリュックに入れなければ。
    4時間ほどで、チャング・ナラヤンには、着くらしい。

    カメラを除く、リュックの重量は、11キロほど。
    そんなに重たくはないリュックを背負って、部屋を出て、チェックアウト。

    午前9時、チャング・ナラヤンを目指し、出発。

    まずは、ローカル・バスターミナルを目指す。
    昨日、行ったり来たりと歩いた道をカメラをぶら下げ、歩く。
    さすがに昨日、歩いていただけに、懐かしさや寂しさは、ないけども、ここに来る事は、多分、もう無いんだなと思う。
    それにしても天気が良くて、暑くもなく、気持ちがいいです。

    ローカル・バスターミナルの近く、昨日、夕日を見た丘の下ぐらいに、トレッキングのルートがあると、

    ガイドブックに書いてあったので、その近くにいた警官に「チャング・ナラヤン?」と言うと、この道だと、山の斜面を下る道を指した。

    よし!この道か、行こう!チャング・ナラヤンへ。