旅の始まり
タメルチョークから、ほど近い場所にある宿「THAMEL WHITE LOTUS GUEST HOUSE」に部屋を取り、一夜が明けた。
部屋には、ベッドが1つと机が一つ、イスが2脚。それとトイレと洗面所が付いています。
汚い部屋ではないが、この部屋で400Rsとは。(1Rs=約1円)
ポッポッー!ポッポッー!と鳩の大合唱によって、目が覚めた俺は、今日の予定を考えた。
どうしようか?もう1日、カトマンドゥに滞在して、旅慣らしをした方が良いのか?
それとも日本で計画していた通り、今日ナガルコットへ行くか?
昨夜のタメルの静寂さが、7年前とは、あまりにもかけ離れていたので、予定通り旅を進める事が出来るのか、俺は不安を抱いていた。
とりあえず外へ出て、ブラブラしてみながら決めようと思い、出発の準備をする。
歯を磨き、昨夜、売店でウイスキーを買ったときに薄いポリカップをもらったので、それにペットボトルの水を注ぎ、口を濯ぐ。
蛇口からの水は、もう少しネパールに慣れてからにしよう。
そして、コンタクトを入れて、準備完了です。
部屋を出て、幅の狭い階段を降りて、宿の外へ。
まだ8時にもなっていないツーリストエリアのタメルは、昨夜よりかは、人の往来はあるものの店は、シャッターが降りた状態で、
閑散としていると言う印象が、まだ頭から離れない。
やっぱ、7年前とは、違うんだ。
しかし、通りを歩き出し、しばらくすると店のシャッターが開きだし、人の数も増えて来た。
朝の通勤の時間なのだろう。
首をすくめて、足早に歩く男。スクーターが、細い通りを走り去り、荷物をくくり付けたオンボロ自転車が何処かへと向かっている。
ヒンドゥーの小さな祠では、左右にある神様の石像に鮮やかなオレンジの花輪が掛けられて、
祠の中では、お祈りをしている老婆が「カン、カン」と鐘を鳴らしている。
音が懐かしい。
この通りを抜けると、広い道路へ出た。
車やバイクが、ここでもクラクションを鳴らしながら、道路を走り抜ける。
スクールバスも走っている。ネパールには、冬休みって、あるのだろうか?
コンクリートが剥がされたようなボコボコとした、歩道とは呼べないような道の壁には、映画の宣伝ポスターが、何枚も貼られている。
どんな映画なんでしょうか?
そんな、カトマンドゥの朝の通勤風景を見ていると、なんか懐かしくなってきた。
そして、通りの喧噪と何かが入り交じったような、臭いが、俺の記憶を確実に呼び覚ました。
7年前の光景が、一瞬にして甦った。
「今、歩いている通り、俺知ってるわ。」
戻ってゆく、まるで体内で変化が起こっているかのように。どんどんと記憶が甦る。
時が戻る感触がして、それから今朝抱いていた不安が、消えた。
再び、タメルへ戻ると、通りの店もほとんどが開きだし、活気が出てきました。
あっ、こんな感じ!この通り、覚えてる。などと、一人頷きながら、通りを歩いていると、
やっと、お腹がすいて来たので、朝ご飯を食べに、食堂へ行こうと思います。
それでも、あっちへブラブラ、こっちへブラブラとしてしまいます。
通りを歩くたびに、7年前を思い出す。
「シェリー・チベット懐かしい。通りに面した部屋は、メッチャ騒々しかったな。」
「あっ!ホテル・フロリド。うわー懐かしい。」なんて感じで。
7年前、ほぼ毎日行っていたホテル・フロリドの横にあるチャイ屋が、開いていたので、チャイを飲んでみようとチャイを注文した。
よくここで、旅人と会って、いろんな話をしたな。
しかし今日は、なのか?知りませんが、周りは、ネパール人のおっさんばっかりやけど。
この時期のネパール、カトマンドゥは、もっと寒いかと思っていたが、思ってたほど寒くはない。
どちらかと言えば、日本の方が寒い気がする。
しかし、温かいチャイは、体を少し暖め、日本で固くなってしまった心を少し溶かしてくれた。
7年前は、1杯5Rsだったチャイが、20Rsになっていたのは、驚いた。
物価が4倍にもなっているなんて、そら宿代も上がるわけだ。
チャイを飲んだら、よけいにお腹が空いて来たので、食堂へ。
是非、トゥクパを食べたいと思っていたので、ありそうな食堂を探しながら、歩いてました。
トゥクパとは、チベットの麺料理です。(チベット風うどん)って感じ。
薄暗い店内に入り、メニューを見て、玉子トゥクパを注文(65Rs)
ラサと違って、ネパールのトゥクパは、美味しいです。
そんな美味しいトゥクパを食べているとき、俺は、今日ナガルコットへ行く事に決めた。
カトマンドゥの喧噪と臭い、温かいチャイとトゥクパで不安は、完全に消え去っていた。
そして俺は、感じた。予定通り、旅を進められる自信と言うか、手応えみたいな物を。
確か、ガイドブックによれば、この時期はナガルコット行きのツーリストバスが、出ているはずだ。
じゃあ、旅行会社へ行こうか、いや、確か俺が泊まってる宿もチケットの手配をやっているとフロントに書いてあった。
よし!一旦、宿へ戻ろう。
宿へ戻ると、俺は、ここのオーナーに、今日のナガルコット行きのバスの手配をしてもらった。(350Rs)
出発は、13時30分で、13時に宿に戻って来るようにと言われた。
今は、9時なので、あと3時間ある。
よっし!やっと旅が始まった!
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