早朝7時に、宿を出た。
    外は、昨日から引き続いての雨。

    「西安は、あまり雨が降らない場所と思っていたが。。。」

    絶対に、着ないであろうと思っていた、ジャンパーをカッパ代わりに着た。
    持って来て、良かったが、このジャンパーを着たのは、これが、最初で最後でした。

    あまり時間がないので、タクシーで駅まで行くつもりだが、これが、なかなか、つかまらない。
    大通りの西大街に出る前に、2台のタクシーに手を挙げたが、1台目は、無視された。

    西安は、国際都市のわりには、外国人が嫌いなようで、外国人と分かると、無視するタクシーが多い。
    中国語が使えないと、なおさらだ。
    昨日も何度か、こんな目にあった。

    2台目のタクシーは、止まったが、
    俺が、西安駅へ行きたいと地図を見せるが、「見えない、見えない。」と言って、乗せてくれず、
    バタンとドアを閉められて、走り去った。

    東大街に出て、3台目のタクシーをつかまえると、俺は、すぐにノートとペンを出して、
    「西安火車站」と書き、ドライバーの兄ちゃんに見せた。

    兄ちゃんは、頷き、「わかった、乗れ」って感じで、やっとタクシーに乗る事が出来た。

    西安駅に着いた。
    列車の出発は、7時41分。あと20分ほど、あります。
    なんとか間に合いそうです。

    西安駅前にて

    駅へ入って、正面にあるエスカレーターで、2階へ行き、俺が乗る列車の番号「1095次」の文字を探す。
    「あった!」意外にあっさりと見つかり、ホームへ。
    俺が乗る、13号車は、階段を下りた、目の前にあった。
    中国で列車の移動は、ほんま久しぶりだったので、すんなり進んで、良かった。

    車両へ入ると、蒸し暑い熱気が、体中をなめ回すように、まとわりつく。
    暗い色が多く、色彩が乏しい車内には、すでに多くの人が、席に着いていた。
    切符を見て、25番の席を探し、狭い通路を歩くが、背負っているリュックが、邪魔で、
    すれ違う人には、もちろん。座っている人に、あたる事が、何度かあった。

    俺が座る席が見つかったが、兄ちゃんが座っていたので、切符を兄ちゃんに見せて、どいてもらう。
    みんな席が空いていれば、ここぞとばかりに座ってきます。

    俺は、リュックを席の上の荷物置き場に詰め込んだ。

    車両に入った時は、なんか殺伐とした雰囲気を感じたが、こうして席に座り、落ち着いて、周りを見渡すと、特にそうでもない。
    照明が少ないので、暗い感じは、しますが。

    3人がけのシートが向かい合って、6人一組って感じで、座っています。
    俺は、通路側です。
    俺の隣に座っている、ちょっと冷めた風な感じがする青年は、まだ20歳前後だろうか?
    その隣、窓際の席には、良く分からないが、おばさんまでとは、いかない女性が、うつむいたまま座っている。


    向かいの3人は、通路側と真ん中の席は、若いカップルが座っている。
    女性が、男性にベタベタと甘えていますが、気に入らない事があれば、プイッとしたりと、わがままな感じ。
    見ていると、少々イライラするが、この男性からしたら、そうでもないようだ。
    カップルの隣は、メガネをかけた、賢そうなオッチャン。

    10分遅れで出発した列車は、すでに西安の街を遠く離れた。
    車内では、特にやることもなく、音楽を聴いたり、タバコを吸いに行ったりと、暇です。

    出発から2時間ほど経ち、車内の雰囲気にも慣れた俺は、ローライ35Tを取り出していた。
    斜め前に座っている、子供を撮ろうと思っている。

    「チッ!」と言う音が鳴り、フィルムを巻き上げる。
    その一連の動作を見ていた、メガネのオッチャンが、俺に「それは、カメラか?」と話しかけて来た。
    最初、何を言っているのか、分からなかったが、カメラを指差していたので、多分そうだと思う。

    「カメラだ。」と英語で答えると、そこから、俺とメガネのオッチャンとの筆談&英語での会話が始まった。
    って言っても、俺は、英語も中国語も会話をするほどは、出来ないので、質問に何となく答えるだけです。

    皆さん、俺が、中国人でないと分かると、興味津々です。

    話の内容は、東日本大震災や福島の原発事故、津波によって多くの人が亡くなった事など。
    さらには、カップルの男性も交えて、少しですが、やりとりをする。
    こんな時、必ず思う事がある。
    「あーあ、もっと中国語を話せたら良いのにと。」

    天水駅にて
    天水駅前

    この列車に乗って、どこまで行くんだ?と聞かれ、俺は天水と答えると、
    隣の冷めた兄ちゃんが、自分の切符をチラッと、俺に見せ、天水まで行く事が判明した。
    もし、天水で降りられなかったら、どうしようと不安だったのですが、
    これで、下車するときも大丈夫だ。
    冷めた兄ちゃんのさりげない親切が、とても嬉しかった。

    メガネのオッチャンは、宝鶏で降りた。
    宝鶏を出ると、車窓の風景は、山というか、起伏がある、大地が広がっている。
    広い、広い大地が、どこまでも続いているようだ。
    こんな広大な風景、日本じゃ見られない。
    ほんと、中国の広さを感じさせられる。

    俺が、車窓からの景色に目を奪われていると、冷めた兄ちゃんが、列車が天水に入ったことを教えてくれた。
    そろそろ到着か。

    そして、西安を出発してから、約4時間後。
    甘粛省、第二の都市、天水に到着した。

    あー、お腹空いた。