12月29日(火)

    塔公(ターゴン)ゴンパへ行けなかった俺は、時間を持て余すことに、なってしまい、康定一の名所、足包馬山へ行くことにした。

    5年前の地図を見ながら、入り口へ向かうが、どこが入り口か、わからない。

    近くで、線香などを売っていたおばちゃんに、聞くと、ここから行けば良い。
    なんて、ことを言われ、寺院へと。

    この寺院は、再建中なのか、朽ち果てている途中なのか、よくわからない寺院。

    ついでだからと、お堂の中へ入り、参拝。

    参拝客のおばちゃんに、足包馬山に行きたいと言うと、こっちだと、案内されたが!

    階段の上には、扉があり、閉まっている。

    おばちゃんは、「大丈夫」なんてことを言い、手招きをする。

    そんなら。

    と、階段に差し掛かった瞬間!

    ガルー!、バウ!!バウ!!バウー!!!!!

    と、とても大きなチベット犬が、現れて、今にも襲い掛かりそうな剣幕だ。

    犬は、鎖で繋がれているが、繋がっている木が、今にも折れそうで、恐い。
    いや、あと2、3回、引っ張れば、折れそうだ。

    一気に、萎縮してしまい、一歩も動けない俺に、おばちゃんが、またまた「大丈夫」なんて言う。


    大丈夫なわけがない。

    俺は、もう恐くて、そっちへは行きたくない。

    足包馬山なんて、もうどうでもいいから、帰る。

    と、そこへ、寺院にいる、おっちゃんが登場。

    犬になんか言うと、犬が黙った。

    「来い」とおっちゃんが言う。

    「無理、絶対無理」と、俺は、日本語で言い返す。

    ほんとに、心から、帰りたい。

    でも、行きたいと言ったのは、俺やし。

    しかたなく、階段を上がろうとすると、また犬が吠え出した。

    なんじゃ、この犬。
    メチャメチャ、でかいやん。

    絶対に、食いちぎられる。

    おっちゃんが、犬を抑えてくれている間に、扉を走って、くぐりぬけた。

    まだ、犬が吠えている。

    今にも、襲い掛かってきそうな勢いだ。

    俺はと言うと、扉をくぐり抜けてからは、後ろを振り返ることなく、猛ダッシュで、山を登る。
    登山路は、雪で覆われているが、そんなの関係なく、走った。

    息が上がっても、走った。

    タルチョが、邪魔でも、走った。

    滑りそうになっても、走った。

    犬の声が聞こえなくなるまで、走った。

    引き返す事は、俺には出来ない。


    やっと、平常心になれた。なんじゃ、ここは?

    はっきり言って、雪山です。
    だれもいないし、何で、俺は、こんな所に来たのだろう。

    はぁ、はぁと、息が上がる。

    40分ほど、山を登る。

    街から見えた、山頂と思われた、建物は、ただの展望所で、まだ先があった。
    街が見渡せて、気持ちよかったけど、風が強くて、また、はぁ、はぁ。

    再び、歩き出した。

    俺は、何をやってるんだ、一体。

    犬の恐怖と戦い、息を切らし、汗をかき、孤独にも耐えながら、やっとの思いで、たどり着いた先は!
    なんやねん、ここ?

    山頂公園です。ちょっと、チベット風。

    しかも、50元の入場料まで、とられてしまった。

    白い仏像まで、ご大層に作っております。
    ありがたくもない。

    暇そうな馬が、クソしてます。

    ブサイクなチョルテン(仏塔)までも、堂々と建っている。

    このやる気の無い公園を見て、何か、あっけにとられた。

    あんだけ苦労して、登ったのに。。。

    これぞ!無駄な努力とでも言うような気分だ。

    チケットの地図には、寺院が描いてあるので、ここで下山すると、本当に無駄になりそうなので、行ってみることにした。


    しばらく歩くと、チベットゴンパ(九龍池浴佛殿)が、姿をあらわした。

    あまりにも伝統を無視したような作りで、多少ムカツクが、中へ入る。

    中は、体育館みたいになってて、中央には、色鮮やかな人形や壁画が一緒に置かれている。

    ん〜ん。

    何か、正月とお盆を一緒にして、末期的な、めでたさを演出しているようだ。
    開き直りすぎだ。

    祈る気にもなれない。

    ここには、僧侶が2人いたので、日本人だと言い、出されたお湯を飲みながら、ちょっとお話。

    僧侶は、俺にケータイの写真を見せた。

    そこに写っているのは、カルマパ17世。

    なんと、会ったことがあるようだ。ほんまかいな?

    次は、テレビの画像を撮った写真。

    どうやら、お気に入りの女優さんのようだ。僧侶とて、男なのさ。


    俺も、今までこの旅で撮った写真を見せる。

    「ラサじゃないか!」なんて話をして、少しの間、異文化交流。

    やっぱり、現地人との交流は、楽しいですね。
    ちょっとは、報われたような気がした。

    久しぶりに、自然の中にも身を置けたし。

    さてと帰るか。

    寺院を出て、公園入り口付近にある、もう一つの寺院へ行き、少し降りると、なんと!ロープウェイ乗り場がありました。

    俺の努力は、やっぱり無駄だったのか!ちくしょー!
    しかし、冬季は休業なのか、動いてなかった。
    よかった。

    来た道とは、別の道で、下山し、街へと戻りました。


    康定には、これで3度目でしたが、山頂公園に来たのは、初めてでしたが、苦労した割には、損した気分になれた。

    絶対に、もう二度と行かない。