母なるメコン(ミ・トー)

     昨日は色々あったが、今日は予定通りにホー・チ・ミンよりも南の街ミ・トーに行った。
    ミ・トーは、ホーチミンよりも南に位置する、メコン川の支流にあるメコンデルタ地帯の街。
    ビザの残り期限が、あと少しなので時間が有れば、更に南の街、カン・トーへも足を伸ばしてみたい。

     ミ・トー行きのバスはチョロンから出ているので、そこまで俺が泊まっているゲストハウス『TiTi』
    専属のバイタクで行き(20,000VND)バスに揺られること2時間半。
    メコンデルタの街ミ・トーに到着。(15,000VND)バスターミナルから中心地までかなりの距離がある。

     『TiTi』専属のバイタクの兄ちゃんがミ・トー出身だったので、俺がミ・トーへ行くと言うと、彼は「友達に電話をしてあげる。」と言っていたが、本当に電話してくれてたらしく、彼の友達が、バイクで迎えに来てくれていた。

    そして彼は俺を安宿に案内してくれた。(一泊US8$)
    チェックインの時に、俺は重要な物がないことに気が付いた。
    俺は入国の時の黄色い紙をホー・チ・ミンのゲストハウスに忘れてきてしまった。
    これは案外、重要な紙らしくこの紙がないと宿泊できない所もある。
    しかし安宿はそんなことノー・プロブレム。
    でも、それが無いと、あとあと困ることにもなるようなので、取りに帰ろうかとも考えたが、なるようになるだろうと、楽観的に考え、ここに2、3泊して戻ればいいか。とチェックイン。
    こうして俺は多数のアリさんと2匹のトカゲと同じ部屋に泊まることができた。

    メコン川の支流

     彼は「今日、これからどうするんだ?」と聞いてきたので、俺は「今日は特に何もしない。」と答えた。
    本当に今日は、何もせず、ただブラブラとしてみたいな。と思っていた。
    そして「明日は?」と聞かれ、「明日はメコン」と言うと、彼は明日、3時間でUS15$でボートに乗らないか?と言ってくる。
    俺はホー・チ・ミンでUS40$でボートに乗った人を知っていたので、おっ!これはボッタクってないナと思い、OKと言った。
    しかし昨日の事もあったので、もしアナタが言った事と違うことをすれば、
    俺はあなたを殴るとジェスチャーをつけて話した。
    そして今日、1時間おまけで乗せてやるよ!ということになったので、お言葉に甘え、ボートに乗った。

     メコン川。でかい、ワイドだ。揺れている。
    まるで陸がゆっくりと揺れているという感じだ。
    川はゆっくりと流れていて、まるで街や人々を優しく包みこんでいるようだ。
    そんな川でボートに乗って、魚を捕っている人もいれば、大人、子供と泳いでいる光景も見ることが出来た。
    みんな、このメコン川の子供達のように街も人も母なるメコン川に抱かれている。
    たった1時間だけだったけど、母なる大河、メコンを体験できてうれしい。
    船着き場では、少年少女が泳いでいて、とても楽しそう。そして濡れたままの状態で家路につく。
    裸足で夕日に照らされたメコンを背にして。


     翌朝8時に俺はまたボートに乗って、メコン川に揺られた。今日は曇りだが、気持ちの良い朝だ。
    最初に着いたのは、ココナッツアイランド。お土産のレベルは高いが、ここの建造物はチャッチイすぎる。
    だいたいヤシ教団って、なんやねん!?
    ココナッツだけを食べて生活していたらしいが、完全に”アホ”としか思えなかった。
    ボートはやがて、雄大なメコン川を進み、密林へと入って行った。

     所々が島になっており、そこには家が建ち人が住み着いていた。
    そして、お決まりの蜂蜜茶を飲んだり、山盛りのフルーツを食べたりと3時間のコースを楽しんだ。
    だいたい朝8時からボートに乗っている外国人なんて一人もいなくて、行く先々俺一人だった。
    朝早かったら、水上マーケットでもやっているのかな?と思っていたが、そんなんやってなかった。
    メコンがデカすぎるゼ!今度ベトナムに行ったら、もっと南に行きたい。

    ヴィン・チャン寺
    メコン河で泳ぐ人たち

     このあと、市場を散策していたが、とっても臭いので長居はできない。
    俺はバイタクを拾い、ヴィン・チャン寺へ。なんとなく行ってみようかと思っただけだったが、ここで、とても幻想的と言うか、心地良い体験をした。
    建物の中へ入り、イスに座っていると、笛の美しい音色が聞こえてきた。
    俺は周りを見渡してみると、足の悪い青年が笛を奏でていた。とてもいい音色だ。
    そして俺はしばらくの間、空間と音の融合に身をおいた。
    短い時間だったが、今ここに自分がいることをとても幸せだと感じた。
    雨が降りそうだったので、バイタクで帰り、部屋で休んでいると大雨になった。
    これから郵便局に行くので、しかたなく大雨の中、傘を差してPOST OFFICEへ。

     まだわずかな時間しか、雨は降っていないはずなのに、道路はすでに池のようにも川のようにもなっていた。

    クツとズボンがもうびしょ濡れ。
    ここミ・トーで傘を差しているのは何故か俺一人。みんな合羽を着ている。
    しばらく郵便局で雨宿りをしたが止みそうにない。
    しゃーない、出ましょうか。歩いているとハラ減ったので、何か食べようと食堂へ。
    俺がメシを食べていると、小さな女の子が合羽を着て、お金を握りしめてパンを買いに来た。
    とても良いシャッターチャンスだったが、すぐに帰るつもりだったのでカメラを持ってきていない。
    しかしこの時の光景は未だに目に焼き付いている。


     部屋に帰っても、何もやることはない俺はトイレ付近に発生する大量のアリさんを撲滅することにした。
    虫の死骸に群がったアリさんを今だ!って感じで水で流したり、アリさんの進入経路を突き止めて、ロウソクに火を付けてロウをアリさんの出入り口に流し込み終了。
    これでアリさんの数はメッチャ減った。外が急に静かになった。雨が止んだのだ。
    俺はもう一回、メコン川を見ようと部屋を出た。

    *ボートの相場は3時間でUS10$らしい。




    再び ホーチミンへ

     ミ・トーとも今日でお別れです。朝からyomilk(ヨーグルトとミルクのジュース)を飲みながら、ベンチに座って、メコン川を眺めていた。あっーあ、もっと南に行きたい。
    あの黄色の紙さえあれば、カン・トーへ行っていたのに。
    小さな女の子がアオザイを着ている。後ろ姿をパシャ!
    そろそろ帰ろうかなと思い、宿の方に歩いていると、昨日メシ食った食堂のオッサンに呼ばれ、
    そしてコーヒーをおごってもらった。
    「ありがとう」と言い、宿へ帰り、荷物を背負ってバイタクに乗った。

     バスターミナルに着き、チケットを買ったが、この前よりも安い。(9,000VND)
    しかし、その分バスもボロかった。バスは快調に走り、約2時間でチョロン バスターミナルに到着。
    降りたら、荷物の奪い合いで大変かな?と思っていたが、そんなことはなく、数人のオッサンがファム・グー・ラオに行くんだろ?俺が行ってやるぜ。
    と言ってくるだけで、ちょっと拍子抜け。
    俺はまだ一回も乗ったことがないバイクシクロで行くことにした。(20,000VND)

     バイクシクロは、なかなか気持ちが良い。ぶつかったら即死まちがいなしやけど。
    バイクシクロの兄ちゃんはファム・グー・ラオの手前で止まったが、俺がもうちょっと行って。と言うと兄ちゃん、不機嫌になった。だいたいお前らはいつもツメが甘い。
    いっつもこんなもんでええやろって感じだ。
    こういうヤツラには厳しくいかなアカン!

     『TiTi』ゲストハウスは快く俺を迎えてくれた。黄色い紙も無事に見つかり一安心。
    ホテル代は月曜日に払うと言ったが、どうも祝日らしい。火曜日に払うことになったが、それまで俺の生活費が足りるかどうか不安だ。
    特に行く所もないので大丈夫だと思うが、ホー・チ・ミンに予定よりも長く居ることになってしまった。


     ここファム・グー・ラオ周辺にはゴールデン・ウイークに突入したせいかメッチャ日本人が多い。
    おっさん、おばはん、学生とどこを見ても日本人だらけです。
    そんなにベトナムって、人気のある国なんかい?
    ボッタクられて、殺されかけて、この国の良いところは、と聞かれると、小悪党と言い争って、ストレス解消!くらいしか思いつかない。
    おっさんなんかベトナムに来て、レストランでバカ高い”カツ丼”食って、日本のスポーツ新聞を読んでおりました。
    こんな、何しにここにやって来たのか?よく分からないヤツもおります。
    俺は当初の予定ではゴールデン・ウイークにはカンボジアに行って、アンコール・ワットを見ているはずやってんけども・・・
    俺はファム・グー・ラオでシントー(ジュース)を飲んだり、土産屋を見たりと、ブラブラして、ヒマなのでスーパーにでも行ってみようとMAXMARKへ行き日用品を購入。

     ここからの帰り道、シクロマンにつかまっている、日本人旅行者を発見した俺は
    彼らを悪徳シクロから守るべく、どこまで行くんですか?と声をかけた。
    どうやら俺と同じ所、ファム・グー・ラオまで行くらしい。
    彼らは一生懸命に地図を見ているがここがどのあたりか、全く解らないらしい。
    俺は「ここからファム・グー・ラオまで近いし、歩いて余裕で行けますよ。」と言って、悪徳シクロにバイバイと言って、彼らを案内した。当然シクロマンは怒るが無視。
    どうせ地理のわからん今日来た旅行者に「遠いからUS2$で行ってやる」なんて言っていたのだろう。
    予想通り、そんな事を言っていたらしく、僕は彼等にお礼を言われてしまった。
    俺もベトナムに来て、性格がひん曲がってきまった。

    ゲストハウスに戻ると、ホイ・アンで出会ったyouさんに再会した。
    そして明日の晩、飲みに行くことに。